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第1部 一章【財前姉妹】その5 第八話 ラーシャ

作者: 彼方
last update 最終更新日: 2025-04-13 10:00:00

55.

第八話 ラーシャ

ツンツン

 カオリが赤伍萬のキーホルダーをつついてwomanを呼び出す。

《なんですか? カオリ》

(別にぃ。声聞きたいなと思っただけ)

《なんですかそれは。恥ずかしいな。もう……。神の無駄遣いはやめてください》

(なんか減るの?)

《無尽蔵ですけど……》

(今日はね、ラシャの付喪神さんの名前を考えようと思って)

《なんだ、用事あったんじゃないですか》

(一応ね)

〈……わ、私の…… 名前?〉

(そうですそうです。せっかくキレイな声してるから)

〈照れます〉

……………

(あれ? もしかしてwoman消えてない?)

《まだ居ますよ。考えてただけです。でもそろそろなんで消えるの面倒だからカオリが握ってて下さい》

(ハイハイ)

 カオリはキーホルダーを勉強机の電気スタンドから外して手でギュッと握る。

〈私はラシャでいいですよ。その通りなんだし〉

《……わかった! 『ラーシャ』とか。可愛くないですか!》

「それいい!」

《あっ! カオリ! 声出てますよ》

 部屋にはマナミは居なかったが奥の部屋でお母さんが仕事してた。

「カオリなんか言った~?」

「んーん。なんでもないの。サッカー観て応援してただけー! 『それーー!』『がんばれーー!』って」

「ふーん」

 こうして、ラシャの付喪神の呼び名はこの日から『ラーシャ』になった。

◆◇◆◇

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